うまれるように -馬場めぐみ
水底で少女は砂になりたくてでもなれなくて鮫になりました
おとなしくて引っ込み思案でわがままで誰の言葉もきこえてないの
蠢けるなにかが何かもわからずに腐るのも枯れ落ちるのも嫌
中庭に佇む獅子は目を瞑りもう誰か僕を食べてくれという
目を開けることば薄膜を突き破ること今この時うまれるように
大事だと言われ身体の奥にある海に初めてひかり射し込む
眠るきみの胸の微かな振動に合わせ息吸う またいきていく
わたしじゃない誰のさみしさも手のひらで掬いたんぽぽの綿毛にしたい
液体のように満ちゆくかなしみをきみが纏えばともにたゆたう
星はただそこにあるだけ握られて燃えている右手がここにあるだけ