マシンガンをぶっぱなしつつずっとこの時を待っていた

三並夏平成マシンガンズ』冒頭




 喧嘩と仲直りの規則的な羅列が句点も読点もなくノンストップでただつらつらと続いていくような、そういうお付き合いだった。全部なかったことみたいにぱっと元に戻れるときもあれば言葉の上で仲直りしただけでいつまでもわだかまりや大きなしこりを長く引きずることもあったし、あたしたちの関係には区切りや整頓がなくて本当にただ本能だけの生きものになって楽しいことだけ追いかけてがむしゃらになっていた。ろくに勉強なんかしないくせにそういうことには貪欲で、果ても尽きもなく、知性のかけらもない脳みそでそれだけを深く求めていた。幼かった。バカだった。でもそんなこと気づけなかったしだから知らなかった。あたしもみんなもただのアホで、誰が一番マシかを競った。先生のやさしさという名の脅しを真に受けて傷ついたり反抗してみたり今考えるとツメが甘すぎることを何度も何度も繰り返して、最後にはからからに乾くんだ。あたしたち、週末はきまってしらけていた。昼までこんこんと眠り続けてしまうほど遊び疲れた自分に妙な苛立ちがあった。あたし何してんのかしらと問い詰めて初めて自分が猛烈に恥ずかしくなる。何も残らなかった。でも七日後にはまた同じことするんだ、笑っちゃうね。そうやって体の水分と若さをどんどん失ってブラックホールのような何もないところに吸い取られていっても渇きはまだあたしの中に残っているみたいで、ふと小さな子供に返って外で思い切り動けなくなるまで遊びきってみたくなる。そうしたら何か変わるんじゃないかと思った。試してみたいと思うことは沢山あるのだけどそのほとんどに失敗してしまうのが体当たりの若さなのかもね。毎日がそんな挑戦に満ちている。夜は明日が楽しみで眠れないのにいざその待望の朝がやってくるとまぶたを押し上げる力はいくら低血圧だからって老人よりも弱かった。
 変な場所だと思った。今でもおかしな場所だと思っている。
 その場所は例えばあたしが磁石のN極だとすればある日はS極となりあたしを吸い寄せるようにひきつけるくせにまたある日はN極となって絶対的な力であたしを寄せ付けないのだ。この不思議な引力と斥力がどこから生まれてくるものなのかあたしは知らない。
 その場所をただの木片と鉄片の塊だと思い込んで恐れを消してしまう方法をみんな血眼になって探しているけど果たしてそんな方法が本当にあるのかどうか、今のところ応えを知る人は誰もいなかった。あたしたちがその秘密にたどり着いてしまったとき、きっと大人と子供の関係は大逆転するだろう。